開放姿勢貫く上海輸入博 販路拡大目指す日本企業
続昕宇 袁舒=文・写真
第4回中国国際輸入博覧会(以下、輸入博)が11月5~10日、上海で開催された。新型コロナウイルス感染症の影響があるにもかかわらず、今回の輸入博には58カ国と三つの国際機関が国家展に出展し、127カ国と地域から3000社近くの企業が企業展に出展した。参加国数と企業数はいずれも前回を上回った。
習近平国家主席はビデオ形式で開幕式に出席し、こう述べた。「開放は現代中国の鮮明なシンボルだ。中国がハイレベルの開放を拡大する決意は変わらず、世界と発展のチャンスを分かち合う決意も変わらない」。過去3回の成果を踏まえて、今年の輸入博は中国が持続的に開放を拡大し、国際経済協力を強化し、世界の自由貿易を守るための重要な場となった。
中国のハイレベルな対外開放の追い風に乗って、日本企業も今回の輸入博で積極的にビジネスチャンスを探し、中国とウインウインで発展することを期待した。両国とも二酸化炭素排出量削減の目標を掲げている中、グリーン・環境保全は今回の輸入博のキーワードとなり、出展者が打ち出した低炭素・環境配慮商品と特設されたグリーン発展ブースが一段と注目を集めた。
輸入博会場の国家会議展示センター(上海)の南スクエア(新華社)
ニーズに合わせた新たな出展方式
4年連続での出展となった日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年、128社の日本企業を取りまとめて出展し、食品・農産物エリア、医療機器・医薬保健エリア、消費財エリアにそれぞれ展示ブースを設け、展示面積を昨年の2500平方㍍から2900平方㍍に増やした。
獺祭やDHC特定保健用食品、大麦若葉、龍角散ののどすっきり飴……すでに中国人によく知られている製品のほか、食品・農産物エリアのジェトロブースでは多くの新製品が中国に初披露された。岡山県の嘉美心酒造の「しゅわしゅわ」もその一つだ。
食品・農産物エリアのジェトロブースで、気に入った商品のQRコードをスキャンして買い物をする来場者
中国市場のニーズや中国人の消費スタイルの変化に合わせて、日本企業の出展商品も毎年調整されている。上述の「しゅわしゅわ」のようなスパークリング日本酒のほか、中国で高い人気を持つ日本の健康食品も今回の輸入博で種類が増えた。これについて、ジェトロ上海事務所の高山博副所長は本誌の独占取材にこう話した。「今、中国人は『量』から『質』を重視するようになり、それなりのお金を払ってより高品質な商品を買うようになりました。輸入博は世界中の高品質な商品が集まる舞台であり、日本企業とブランドにとって、このプラットフォームを通して商品を展示し、海外市場を開拓することは非常に重要です」
中国市場での販路を開拓するため、日本企業は中国人の購買スタイルに合わせてEマーケティングとデジタル技術を活用している。来場者は商品の横にあるQRコードをスキャンするだけで、購入ページにアクセスし、気に入った商品をその場で注文することができる。新型コロナの影響で一部の日本企業は出展こそできなかったものの、中国市場開拓への情熱は依然として高い。直接出展した128社のほか、約170社から越境ECを通じて販売できる酒類や食品など1000種類以上の優れた商品が展示された。
記者の興味を引いたのは、日本企業の展示ブース横に設置されたタブレットだ。スタッフによると、これはオンライン商談に使うものだという。輸入博を通じた日本企業の中国市場開拓の利便性をより高めるため、ジェトロは昨年の「オンライン商談室」を実際の会場に移し、来場者がその場で商品を手にしながら日本企業と交流できるようにし、商談の効率を高めた。
オンライン商談のために展示ブースに設けられたタブレット
環境保護に日本の技術紹介
新エネルギーと環境保護の分野で、日本企業は早くからさまざまな実践を重ねてきた。中国がカーボンニュートラルの目標を打ち出した今、日本の二酸化炭素排出量削減における経験は中国にとって大いに参考となるだろう。今回の輸入博に出展した日本企業は、中国の炭素削減の課題に着目し、深く分析した上で、中国市場に適した製品と解決案を提案した。
自動車展示エリアに入ると、青と緑をメインカラーとした、シンプルで清潔感とテクノロジー感にあふれたトヨタの展示ブースが目に入る。トヨタは「人と自然の生命共同体を共に築く」というテーマで、包括的な環境保護技術を通じて低炭素社会の構築に向けたさまざまな取り組みを展示した。
トヨタ(中国)投資有限公司広報宣伝部高級項目経理の西川秀之氏によると、トヨタグループは再生可能エネルギーから生成される水素の利用を拡大することで、カーボンニュートラル社会の実現に取り組んでいる。中国には風力や水力などの再生可能エネルギーが豊富にあり、各地域が現地に適したエネルギー源で水素を生産し、地域での消費を加速させ、地域全体における水素の使用を促進することができる。例えば、四川省成都市は水力が豊富で、余剰水力は水素の生産に利用でき、工場周辺の商用車から水素の普及を推進することができる。同時に、水素の長距離輸送が可能な特性を利用して、地域間におけるエネルギー源の格差問題を解決することもできる。
北京冬季オリンピックへのサポートと低炭素をテーマとしたトヨタ自動車の展示ブース
花王は、製品を多様な生活のシーンに照らし合わせて紹介するために、「未来のエコロジー」セクションを設けた。ここでは中国での環境保護および低炭素化社会の構築に向けた花王のケミカル事業の取り組みが展示された。花王は中国市場に参入して以来、日用品の分野だけでなく、環境保護の分野にも深く関わってきた。農業分野における代表的な成果として、最新のドローン用機能性展着剤が輸入博でデビューした。
中国では、農業人口の減少と耕作地の集約化が進む中、ドローンを使って農薬を散布する農業モデルが広く注目されている。花王が開発したドローン用機能性展着剤「KAO ADJUVANT A-200」は、作物表面の薬液の付着性・浸達性を向上させ、農薬の使用量を大幅に削減することで、環境への負担軽減と作業効率の向上につながる。
花王株式会社アジア事業統括(常務執行役員)の西口徹氏は、「中国のドローン産業は世界をリードしており、農業モデルも欧米諸国とは異なるため、ドローンを利用して農業効率を向上させようとする原動力が強いです。ドローンと新しい農薬技術は力強い組み合わせであり、より良い結果が確実に期待できると思います」と語った。
また、上海花王化学有限公司の研究者である談永康氏は、「現在、中国で農薬の散布に携わる農家は小規模で分散しているため、新技術の普及は容易ではありません。これからは新技術を普及させるために農村地帯に飛び込んで、地元の農家の環境保護意識向上に役立てればと思います」と今後の実践について説明した。
ドローンを使用した農薬散布作業(写真提供・花王)
将来見据えた中国市場開拓
中国人の消費構造の高度化とビジネス環境の改善、または関連政策のサポートによって、外国企業にとって中国市場の魅力はますます高くなっている。前出の高山副所長は、「現在、日本国内の消費は低迷を続けています。それに対して、中国はより早く感染を抑制できていて、それに電子商取引が急速に発展しています。こうしたことから、新型コロナの流行を背景に、日本企業は中国市場を狙って発展の道を模索しています」と述べた。
1978年に中国市場に進出して以来、松下電器(現パナソニック)は改革開放後の中国の投資環境の改善を目にしてきた。パナソニック株式会社代表取締役、中国・北東アジア総代表の本間哲朗氏は次のような期待を語った。輸入博は海外企業が中国市場の最新動向を理解する重要な窓口であり、海外の商品や経営理念を中国の友人に紹介する重要なプラットフォームでもある。衣類乾燥機や食器洗い機を例に挙げると、ポストコロナ時代には、中国人のクリーニング用品に対するニーズが一層際立つだろう。パナソニックも引き続き中国で新たな投資を行い、新たな事業を開拓していきたい。このような良好な投資環境が長期的に続いてほしい。
新技術の開発において、中日両国は幅広い協力の可能性を秘めている。トヨタ自動車の西川秀之氏は、研究開発における成果を語った。「中国に来て、電気自動車の普及率が非常に高いことに驚きました。日本をはるかに上回っています。これは新エネルギー車に対する中国人のニーズが非常に大きいことを示しています。同時に、近年、中国では新技術の推進・研究開発が、目覚ましい成果を上げています。そのため、中国現地のパートナーと積極的に協力し、技術の進歩と再生可能エネルギーの普及を通じて、カーボンニュートラルの目標実現に貢献していきたいと考えています。昨年、億華通、第一汽車、東風、広州汽車、北京汽車などの中国自動車企業と共同で研究開発チームを立ち上げました。このチームによって開発された商用車向けの燃料電池システム『TL Power 100』は、11月3日に中国で正式にリリースされました」
中国市場の潜在力は巨大だ。今回の輸入博で日本企業が展示した内容から、中国市場への新製品のプロモーションだけでなく、中国とのより多様な協力の在り方や新たな機会を模索していることが読み取れた。